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平井かずみさんが「シンプル」を大切にする理由 前編

「削ぎ落とす」のは、マイナスなことではなく「豊かに感じ取る」スペースを設けること。余計なものを取り払うと見えてくる、自分の本当に好きなモノやコト、その心地よさとは? フラワースタイリスト・平井かずみさんに聞きました。前編・後編に分けてお届けします。

年齢を重ねて見えたシンプルの意味

「やってみる!行ってみる!使ってみる!気になったら何でも挑戦するのが、私のスタイル。難しそうとか、センスがないからと、やらない理由を探しても仕方がないので、まずは飛び込んでみちゃう!そうしないと、見えない景色が必ずあるから。」

現在50歳の平井かずみさんは、そうやってぐんぐん経験値を上げ、失敗もたくさんしながら、今に至るそう。経験を重ねて情報が増えていくと、どんどん肉付けされていくような、自身が大きくなっていくようなイメージがありますが……、「むしろ逆で、すーっと削ぎ落とされました」と平井さん。

「いるもの、いらないものがわかるようになり、シンプルに整理整頓がなされるイメージです。」

経験を重ねてたどり着いたことの1つが、身にまとうのは天然素材が自分には合う、ということ。「洋服はカディコットンやシルクなど、天然素材ばかり。肌に触れるからこそ、自然や手仕事を感じるもの、余計なものが入っていない信頼できる作りに包まれたいと思うようになりました。」

“余白”が感性を育む潤いに

時間の使い方も、ペースを落としてシンプル化。

「以前は予定を詰め込み過ぎて、常にお腹いっぱいだったように思います。楽しいし、充実しているけれど、満腹感でちょっと苦しいような。働き過ぎだったのかもしれません。それは、豊かなようでいてちょっと違う?本質的な部分をもっときちんと味わいたい、と願うように。そこで最近では、分刻みのスケジュールをやめて、午前に1件、午後に1件くらいの予定を入れる、緩いペース配分を心がけています。」

余裕がないと、十分に受け取ることもできなければ、人に優しくすることもできません。感性を大切にしたいなら、“余白”こそが必要と気づいたそう。

「何事も、ぎゅうぎゅうに詰まっている状態には“乾く”ような、水分を奪われるイメージがあります。対して、余白は“潤う”イメージ。空白があるから、刺激を受けた何かをゴクゴク吸収できて、自分の根っこまで染み込ませていける。そうして、吸収したものが、心の中でじんわりと波紋のように伝わり、余韻として残ります。感性がちゃんと響けるだけのスペースを持っておくことが、大切なんですね。削ぎ落としたシンプルは、この上ない贅沢だと知りました。」

視覚にも、余白を大切に。ガラスや沖縄のやちむん、拾った鳥の巣(!?)などを飾った、フランスのデザイナー、ルネ・ガブリエルの棚には、引き算の美学が。「空間の余白には、気持ちにゆとりを生む効果もあります。」

吟味することや、余白を楽しむこと。シンプルこその豊かさに気づかされる平井さんのお話は、後編に続きます。もの選びや人間関係、花を生ける際に大切にされていることをお伺いしたので、お楽しみに。

profile

平井かずみさん

1971年生まれ。草花が身近に感じられるような“日常花”を提案するフラワースタイリスト。雑誌やCMのスタイリングの他、TVやラジオ出演でも活躍。東京・恵比寿のアトリエでは、花の教室「木曜会」や、五感を刺激する企画展を開催。感性に素直に、自然との調和を大切にする人生哲学も注目される。

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